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発病しないための試み。
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今回はもう少し、どこからの出典であるのかなどの開設等もしておこうと思う。

これは、現代思想1986年3月号(増項特集=マイケル・ポランニー 暗黙知の思考)
からのものである。
現代思想という文脈において、マイケル・ポランニーが注目されるようになったのはこのころからだったのではないかと思う。
もちろん、栗本慎一郎氏よる注目によるところが大きいと思われるが、
まだこの時は、栗本氏自身の手による「意味と生命」(暗黙知理論から生命の量子論へ)と題された、暗黙知読解から、身体論、生命論への展開する試みはまだ世に出されてはいなかった。
この特集号は、栗本氏の「非決定とイマジネーション」という論文はもちろんのこと、他にも橋爪大三郎(社会学)、土屋恵一郎(法哲学)、室井尚(美学)、
村上陽一郎(科学史)、慶伊富長(化学)、秋山さと子(ユング心理学)
等の方々も寄稿されており、「暗黙知理論」がいかに超領野的展望をもった
理論であるのかを、うかがい知ることができる。
個人的には、「意味と生命と過剰」と題した栗本慎一郎氏と
丸山圭三郎氏との対談まで掲載されているのだから、
盛りだくさんの企画であったことは言うまでもない。
さて、先日に引き続き、記載しようと思う。


〈暗黙知〉と〈共通感覚〉マイケル・ボランニー読解序説 中村雄二郎

《およそ語られうるものは、明らかに研られうるものである。そして論じえぬことについては沈黙しなくてはならない》(『論理哲学論考』自序)。また、《示されうるものは、語られえぬものである》(同、四・一二一二)。徹底した論理主義の立場からこのように説いた初期ヴィトゲンシュタインは、自然言語の働きを本当に評価しようとする立場に移行するとき、語られえぬが示しうるものにはっきり向かい合わねばならならなかった。他方ポランニーは、《われわれは、語りうることより多くのことを知ることができる》(『暗黙知の次元』)と言っている以上、問題の重なり合いは明らかであるが、その重なり合いはどこまで及ぶだろうか。目安としてとりあえずその要点を捉えておきたいと思ったところ、幸いなことに、J・H・ギルが「語ることと示すことーヴィトゲンシュタイン『確実性の問題』の根本テーマ」(10,191974)のなかで、両者の問題の重なり合いを六つにまとめてとり出している。それを見ておこう。つまり、ここでギルは、後期ヴィトゲンシュタインの主要論点を次のように捉え、それらがいずれもポランニー的問題であると言っている。すなわち、一、われわれは自分たちの語りうるものよりも多くのことを、いつでも知りうるし、事実効っているはずである。二、このような知は、われわれの個人的(人格的)裏づけをもっている。三、根本的な事実についての疑いは、問題外とする。四、それにのっとってわれわれが推論する認識論的枠組の実在性と性格は、焦点的にも捉えられなければ、明示的に分節化もされず、われわれの行動のうちにただ副次的にあらわれるだけである。五、合理的な手続きが正当になりうるのは、ただコミツトメントによってだけである。コミットメントが世界のなかでのわれわれの存在様態を形づくるのだ。六、以上の考えのどれも、真理探究の合理性そして/あるいは実行可能性を弱めるものではない。これらの考えによってのみ、真理の探究が可能になり、意味あるものになるのだ。
 このギルの指摘は、はじめからかなりポランニー的な用語によって後期ヴィトゲンシュタインの論点を捉えているきらいがあるが、内容的にはそれで歪められてはいないし、捉え方としてもなかなか的確だと思う。そして、これらの六つの論点のうち、ポランニーの暗黙知や人格的知(個入的知識)の問題と、とくに深くかかわっているのは、第一と第二と第四の三つであり、またその三つにおいて、ポランニーの暗黙知や人格的知と私の共通感覚やパトスの知が交錯してくるのである。また、それらは相互に絡み合って分かちがたいが、それぞれ言語、身体、相像力の問題にかかわると言っていいだろう。

(つづく)

 ここまでは序文のようなものかもしれない。
 次は、中村雄二郎氏による、暗黙知の解説のような内容に入っていく事となるが、
 中村氏は、ポランニーの理論はわかりにくいというが、中村氏の解説も決して
 解りやすいとうはいえない、と言うよりも元の暗黙知が解りにくいのだから
 しかたがない。とりあえず進めるとして、次回は自分がどのように
 解りにくかったかを書く事で、解説のごときを試みたいと思う。
 では、続きを…。



 そこで、言語・身体・想像力をめぐって、ポランニーの〈暗黙知〉や〈人格的知〉、それらと私のいう〈共通感覚〉や〈パトスの知〉の交錯するところを明らかにしたいのだが、そのためにはまず、彼の〈暗黙知〉について、できるだけ納得いくかたちで捉えなおしておこう。ポランニーのいう暗黙知の働く範囲は自然科学の研究にまで及ぶが、その働きはとくに、人相の見分け方や高度の経験にもとづく医学的診断などのうちによく見られる。それらにおいては、個別的な知識の一々が不必要なわけではないが、それらがただ.ばらばらなものとして存在する限り、精妙な暗黙知としては働かない。必要なことは、それらの個別的な知識の一々が一つの全体のなかに、また一つの全体として統合されることである。人相の見分け方や医学的診断のような領域に典型的にみら右心能力が暗黙知と呼ばれるのは、その能力は、語りうることより多くのことを知っているからである。そこで暗黙知の構造であるが、それを私たちは次の三項から成る三角形として捉えることができる(*)。第一項とは、要因の細目のことであり、それに対する第二項のほうは、統合化された全体として捉えることができる。また第三項とは、第一項(要因の細目)を第二項(統分化され全体)に結びつける個人のことである。

(*)以下の暗黙知についての説明は、『暗黙知の次元』での三項的な把握を中心にし、他の諸著でのポランニーの言説をふまえた上、私自身が捉えなおし、再構成したものである。だから、第一項を〈要因の細目〉、第二項を〈統合化された全体〉としたのも私の捉えなおしによるもので、それらはそのままのことばとしてポランニーのなかにはない。個々の著書での説明がこんなに部分的な著者も珍しい。

このように暗黙知は、分解して示すとすれば、右のような三項の結びつきとして表わさざるをえないが、実際には三項は一体化して働いている。第三項(個人)によって結びつけられると述べた第一項(要因の細目)と第二項(統合化された全体)の関係にしてもそうである。そしてそのことを前提とした上で、暗黙知が働くための第一項(要因の細目)と第二項(統合化された全体)の関係を捉えると次のようになる。
 まずひと(第三項である個人)は、第一項について知っているが、それは、第二項に注意を向けるためには、第一項について感知(意識)していることを手がかりにせざるをえないからであり、またそのようなものとしてである。これが第一項(要因の細目)と第二項(統合化された全体)との基本的な関係である。そしてこの第一項と第二項の関係は、暗黙知の働きにおいて、第二,項を知るためには第一項が手がかりとしてどうしても必要なので、〈手がかりとそれが示すもの〉との関係である(それを以ってポランニーは〈論理的な関係〉と言うのだが、のちに述べるように、これは不正確な言い方である)。また、第一項と第二項の関係は、感知しながらそこから注意をそらすものと、そこへと注意を向けるものとの関係でもあるので、〈から……へ〉(from-to)関係と言うことができるし、さらに、〈から……へ〉の在り様を考えると、それは身近で基本的なものから遠くの末端的なものへを意味するので、解剖学の術語を使って第一項を〈近接項〉(proximal term"基体項とも訳される)、第二項を〈遠隔項〉(distal term'末端項とも訳される)と呼ぶこともできる。二つの項をポランニーがなぜ、解剖学の術語でこのように呼んだかについては、彼自身十分に説明していないが、要因の諸細目と統合化された全体をそれぞれ基体的なものとそれから出発して或る実現を見たものとして捉えていることはたしかである。さて、暗黙知における第一項と第二項は以上のような関係(これをポランニーは〈機能的側面〉と呼んでいる)だけにとどまらない。次に──これもさきに述べた基本形から出てくることだが──重要なこととして、ひと(第三項たる個入)は、暗黙知においてその第一項(要因の細目)を第二項(統合化された全体)の現われ(appearance)のなかに感知しているということがある。暗黙知においては、ひとはあるものから他のものへ注意を向ける場合にも、実は前者を後者の現われのなかに感知しているのである(このことをポランニーは暗黙知の〈現象的側面〉と呼んでいる)。


(つづく)
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